tamagome logs

たまごにことだま、こめてめばえる。

KKST-0016

〇次のキーワードを用いて、八百字以内で物語のあらすじを書きます。

(建設コンサルタント・デジタル生命体・市警察・農業組合)

※キーワードは、Wikipediaの「おまかせ表示」機能を利用して、出来るだけランダムに選びました。

 

〇おしあがり(八百字)

 建設コンサルタント会社に勤めるカジワラは、州の部局から、三十年前整備された農業用パイプラインの機能調査を依頼され、ある地方都市へ赴いた。調整池に接続された地下幹線のうち、破損を理由に五年前から断水したまま放棄された「ハチスカ送水G」の管内へ興味本位で入った彼は、突然、同行していた州職員に襲われ意識を失う。

 目を覚ましたカジワラは、管内のあちこちで、発光したポリゴン立体が動いている光景に驚く。昏睡している自身の姿を見、自分が幽体離脱していると考えた彼は、生還するために地上の者へ事態を知らせようと模索。いくつかの立体とのやりとりを通じて、使われていない配水管末端からの脱出に成功し、農業組合の倉庫へ侵入、中にいた作業員のマキイエへ助けを求めるが、会話ができず、ただ怖がられて逃げられる。カジワラ自身も小さなポリゴン立体と化していたのだ。試行錯誤の末、倉庫の旧式パソコンを作動させられることに気づいた彼は、男どもを連れて戻ってきたマキイエへ、画面を通じて危機を伝え、体を救出してもらい、無事意識を取り戻した。

 カジワラの身柄はすぐに、表向き存在しない「市警察」の隊員・ミチハラの元に渡る。彼はカジワラへ、ハチスカ送水Gが二十年も前から断水され、州有力者の主導で、デジタル生命体の実体化試験に使われたのち、有力者の死により封印されていたことを伝える。秘密保持のために殺されかけたと知ったカジワラは激怒するが、デジタル生命体が消滅すれば彼を自由の身にさせられると話すミチハラに協力し、立体たちから得ていた「水に弱い」という情報を伝える。

 ミチハラを初めとする市警察が動き出し、将来の軍事転用をもくろむ州政府の一部勢力の妨害作戦を突破してハチスカ送水Gに通水、立体たちの姿は消え、カジワラは解放された。しかし、彼がマキイエをお礼に訪ねたとき見たのは、大量の水分を得て実体化した立体たちの群れだった。

 

(※この文章の内容は、フィクションです。趣旨については「はじめに」をご覧ください。)
 仮題:ハチスカポリゴン
 分類:粗すじ
 作成開始日:二〇一三年三月三日
 作成終了日:二〇一三年三月三日
 制作時間:三時間くらい
 文字数:九百二十六

KKST-0015

 悪友どもと賭けポーカーに興じて笑い転げていたところに、まるごと、張り倒すような怒声が響いた。

「何してるの!」

 熱帯夜のテラスが、水を打ったように静まりかえる。

 振り返ると、血相を変えた母が、寝間着姿のまま奥の扉からこちらへ身を乗り出していた。おれはほとんど一心不乱に、その場へ生ぬるい手札と硬貨ひとつかみを放り出し、仲間を蹴り除けて、手前の扉にすがりついた。

 三階の回廊に出る。シャンデリアからの油灯りが、じっとり吹き抜けを照らしていた。夢中で駆けだしたとき、不意に壁際のピアノの鍵盤に手をついてしまう。冷たい感触のあと、重い不協和音が跳ね上がった。引きずられる感覚を振りほどいて、おれは必死で逃げた。

 手応えのない赤絨毯の上を踏みしめて、細く遠く続く回廊を走っていく。焦げ色の幾列もの書架と、睡蓮柄の彫られた手すりが、両目の脇にぶれながら流れていく。

 その途中、ふと思った。

(嘘だ)

 そして立ち止まった。

(こんなおかしなことはない。そうだ、おれは粗末な賭博で遊んだりはしない。万が一にも付き合わされるにしたって、母親にまざまざそれを晒すような節操のないやり方はしないんだ。これは何かの間違いなんだ)

 おれはきびすを返して、胸の内の不安を振り払おう、理不尽を打ち壊そうとせき立てる体のままに、逃げ道を舞い戻った。

(そうだ、)
(これは夢なんだ。そうとしか考えられない!)

 回廊を曲がり、テラスへの扉を二つ超え、更にその角にある閉ざされた片扉へ急ぎ、息吐かぬ間にばん、とそれを引き開けた。

 八帖ほどの簡素な洋間で、母はこちらに背を向けており、一個垂れた白熱灯の傘の光の下、黙って台所のコンロで炒め物をしていた。おれの感情は、激しい確信に変わって、そのまま口をついて出た。

「ほうら、さっきと服が違う、エプロンを着てるじゃないか!」
「おれはなんにも間違っちゃないんだッ!」

 ばらばらに崩れて
 暗転。

 

(※この文章の内容は、フィクションです。趣旨については「はじめに」をご覧ください。)

 仮題:正当化回廊
 分類:夢原作
 作成開始日:二〇一三年二月二十四日
 作成終了日:二〇一三年二月二十四日
 制作時間:一時間くらい
 文字数:八百十四

KKST-0014

 クミニシフェルト墓地のコテージをひと月借りたぼくは、五月から六月にかけてをそこで、やまいを癒やすためにひとり、静かに過ごした。平屋の小さな建物にはひと坪くらいのウッドデッキが組まれており、日中はもっぱらそこで読みものや書きものを、あるいはうたた寝をしていた。

 山のふもと、森のはしは、春の暮れでも朝晩冷える。雨の日は少なかったが、灰白色の空がしばしば眼下の墓銀座に流れて霞んだ。同じ色の息を吐き、震えながら、煮詰めた煎じ薬をすすってのどを通すと、その度に、じんわりからだの芯がほてって、たしかにいのちが動いていることを感じられた。

 エリアスの墓前の仏蘭西菊(ふらんすぎく)を取りかえ、こうべを垂れて祈るころには、しだいに山の向こうから、まぶしい光が降りそそいでくる。そしたら眼を細くして小屋へかえって、電子インクのビニルパネルを開いて、てのひらの上に、いままで毛嫌いしていた新書を日替わりで映し、噛んで含めるよう目を通した。

 どこかで、近くで、遠くで、短い鳥の合図が、途切れ途切れに、静かに揺らぐホワイトノイズの中に投げられては、かすかにこだましていた。不思議なもので、夜明けにはとても硬質に聞こえていたのに、空気が乾いて明るくなるにつれ、輪郭がぼんやりと優しくなって、とても心地よい。

 お昼に日持ちパンとお茶をとると、あたり一面には、ほんのりあたたかいそよ風がからまってできた、腰丈くらいのかたまりがちらほら、草木にはねかえってはずんで、気まぐれに転がっていくのが見えるようになる。ときどき、みどりをひとかけ、花弁をひとかけ食んで、たわむれに軽々と回している。

 いくつかは僕のところへ来て、頬のいちばん敏感なところと、鼻と額へ、にじみこむように撫でつけたあと、まもなくぼうっ、と耳元で囁いて、また向こうへ舞っていく。それになすがまま任せていれば、じきにぼくの意識も、ふちのほうから丸まってきて、からだとのしがらみを落とし、幸せな無へ至れた。

 日が色づき出すと、もっぱら書き写しがしたくなった。ビニルパネルの左半分をメモに切り替えて、右半分の逸文を、静電ペンで無心になって反復するのだ。エリアスがデッキの手すりに腰掛けて、ぼくに話しかけてくるのは、大体がこうしているときだった。
「なにを書いているんだい?」

 やつはいなくなった幾年も前のまま、背にした夕日に柔らかい髪を透かせ、なびかせて、影になった白い顔で、にこやかにしている。それを見て、ぼくは本当に安心した気分になって、一切の気構えを取りはずし、熱いくらいのからだの芯からの声で、そっと答えるのだ。
「呪文みたいなものだよ」

「いいね」エリアスはうなずいて、のぞき込んでくれる。「どんな?」
「戦うための」
 ぼくは、しっかりとやつに伝えた。
「戦うためのことばだよ」

 

(※この文章の内容は、フィクションです。趣旨については「はじめに」をご覧ください。)

 仮題:かぜのたま(breezy one of them)
 分類:勢いで
 作成開始日:二〇一三年二月十六日
 作成終了日:二〇一三年二月十六日
 制作時間:二時間くらい
 文字数:一千百六十二

KKST-0013

 白いカウンターテーブルの上、グラスの束から一本、セロリの茎を取り出して小皿のマヨネーズにつけると、日暮(ひぐらし)はそれを深めにかじって、面倒くさそうに頬張りながら、
「あ、」
 と声を上げた。
「新しいギャグを思いついた」

「あ?」隣に座っていた両角(もろずみ)が返す。手持ちのセロリに小皿の味噌をたっぷり擦りつけながら、「なに。ギャグ?」

「そう」と日暮。セロリを一気に飲みこんで、「披露していい?」

「知らんわ」両角は鼻で笑って、味噌まみれの先端をじっと確かめてから、かじかじ細かくセロリを噛んだ。「勝手にどうぞ」

 その隣では、本堂(ほんどう)がメガネを額に上げたまま、サラダボウルいっぱいに盛られたセロリの葉を睨んでいた。

「では、……」

 コップの水で口を軽くゆすいだ後、日暮は肩を二、三上げ下げしてから、思い切り息を吸って、腹からの声で、
「——インフルインフルぅッ!」
 と発しながら、目を見開いて、構えた両腕を小刻みに振った。
「インフルインフル!」
 やがて両手を交互に突き上げだした。
「インフルインフル!」

「……」
 両角は心ない瞳でそれを見ながら、黙々と口元を動かしていた。

 本堂は意を決したように箸でセロリの葉を一切れつまむと、小皿のポン酢に表裏浸して、さっと口の中に放り込んだ。噛みだしてすぐ、
「どほっ、」
 とむせて、ぎゅっと顔をしかめた。「不味(まじ)い。まじい、まじいよ」

「いかがですか皆さん」
 食べかけのセロリを握りしめ、満足げに日暮が横二人へ訊く。
「いかがですか。久しぶりにこれはキたんだけどな」

「キたって何が? 寿命?」能面みたいな顔だけ向けて、両角はまたセロリの残りに味噌をつけだした。「いいと思うよ。死んで」

「えー、駄目ぇ?」首を捻りながら、日暮が自分のセロリを口に手で押し込む。「本ちゃんは? どうだった今の」

 コップの牛乳で口をゆすいでいた本堂は、涙目でぎろり、日暮を睨みながら、落ち着いた声で、細切れに応じた。

「お前の頭蓋骨を、」
「うん?」
「開けて、」
「開けちゃった」
「脳味噌に電極を埋めたい」

「んええ怖いよそれ! 色々と怖いよ!」大げさに怯んだ日暮の口から、セロリのかすが飛び出す。「おっと、失敬」

「とにかく面白くないわ。根本的な、何て言うかね、」
 大分短くなってきた手持ちのセロリをくわえながら、両角はぼんやり前方の白い壁を見やった。「……思いつかんけど、生きていく中で、ボケに走ることが絶対許されない人間ってさ、世の中にいると思うんだよね。君はそれ」

「ぶうぶう」両手に持ったセロリで天板を叩いて不満を表す日暮。
「じゃあ僕みたいな人間は、どういう路線で行ったらいいんですか」

「知らんわ」
「黙って喰ってな」

 二人ともにべもなく返すので、日暮はむかついて、セロリスティックを二本同時にばりばりむさぼった。

「美味しくない。……美味しくない!」

「んだね」と両角。

「……えぶっ、」目頭を押さえながら飲みこむ本堂。

「どうしてこんなに美味しくないのか!」

「その割にめっちゃ喰ってんね」コップのトマトジュースに口つける両角。

「だってセロリしかないじゃん、ここ!」頬を膨らして憤慨する日暮。「新聞紙とか置いてあったら、今の僕だったら食べるよ!」

「喰うかよ」ご冗談を、みたいに笑う両角。

「喰うよ! そういう勢いだよ、僕はッ!」

「ん」そこに本堂が、両角の頭の上から新聞紙の切れ端を差し出してきた。

「え?」

「ん、」

 本堂の、眼で日暮へ示す先、テーブルの隅に、採れたてのセロリの山があって、その下に新聞紙が敷かれていた。

「ん」

「喰うかよ!」思わず切れ端をはね除ける日暮。

「勢いどうしたんだよ」手を叩いて笑う両角。

「例えだよ! それとなく分かってよ!」

「まあ、喰えや」
 本堂は切れ端を半分に破いて、一方をポン酢につけて食べながら、もう一度日暮へ差し出した。「まじいよ」

「……」
 日暮は、諦めたようにゆっくり首を振って、
「喰うよ……」
 それを受け取ると、こういう勢いだよ、と呟きながら、セロリを筆にしてマヨネーズを塗りだす。

「気分転換にいいかも。俺にも頂戴」

「ん」

 座ったまま、本堂がテーブルの隅へ手を伸ばす。

「わけ分かんないよ、もう……。——ん?」

 マヨネーズでべとべとになった切れ端の中に、日暮は、新聞の刊行日が刷られているのを見つけた。

「平成二十年十月十六日だって」

 両角が、自分のセロリを巻いた新聞紙へ顔を近づけて、

「ほんとだ」

「今日かな」

「きょう、って?」

「いま。この日。セロリもぐもぐしてる、いま」

「いま……」

 両角はそう言ったきり、魂が抜けたようにしばしぽかん、とたたずんでから、ゆっくり本堂と顔を見合わせた。そして、本堂、彼女のほうが代表して、日暮に尋ねる。

「……きょう、って、何だ?」

「えっ、」

 日暮、彼のほうは、はじめ純粋に面食らって、ちらりと目下の小皿に置かれたセロリを見直し、次にテーブル一式の他は何もない、ぴんと静まった真っ白な室内を見回した。そのあと何か、急に顔から血の気を引かして、

「いやいや、」

 二人へ向けて、でたらめに両の手を振りまくった。

「いやいやいやいや。嘘でしょ? いやいやいやいやそんなあ」

「ああ、」両角がほっとした顔で、「なんだ、ギャグか」

「違うわ! 真面目に話してるわボケぇッ!」

「おお、」本堂が感嘆して、「ツッコミの方が良いな」

 

(※この文章の内容は、フィクションです。趣旨については「はじめに」をご覧ください。)

 仮題:セロリもぐもぐ
 分類:掛合い
 作成開始日:二〇一三年二月十一日
 作成終了日:二〇一三年二月十一日
 制作時間:四時間半くらい
 文字数:二千二百六十八

KKST-0012

無印良品の二〇一三年春夏コーディネート集でファッションを決めて、ワンカット書きます。

オーガニックコットンUVカット太ボーダーポロワンピース(三千九百八十円)
・コットンサイドファスナーリュック(二千九百八十円)
コーデュロイリボンバレエシューズ(千九百八十円)

 

〇おしあがり

 待ち人が来るまでの暇つぶしに、斜め前方の席を眺めていた。女子高生くらいの少女二人組で、手前の短い栗毛にピンクの襟立ちシャツの子のことは、背を向けているので良く分からなかったが、向かいに座る黒髪ストレートの子の様子からして、他愛ない話に興じているだけのようだった。黒髪娘は、白地に太いグレーの横縞が入った涼しげな半袖ワンピースの出で立ちで、膝の上に小さな生成りのリュックを乗せて抱え、ウッドテーブルの上の汗だくなソーダをストローで吸ったり、目玉型プリンにフォークを刺して崩したりしながら、屈託なく笑っていた。

「煙の出方が全然違うのねー、グルヌイユの生き血だと……」

「それでソロモンにして、飛ぶと、すごい!」

 などという台詞に被さってウエイターが通り過ぎて、旧い板張りの床の軋みの連鎖に耳が行く。心地悪い冷気を、くたびれた大きな天井扇が外からの強い光と一緒にかき混ぜる。柱と梁の彫り込みが気になるが、近視気味なせいか上手く見えない。

 

(※この文章の内容は、フィクションです。趣旨については「はじめに」をご覧ください。)

 仮題:MUJI 2013SS 73F
 分類:カット
 作成開始日:二〇一三年二月十日
 作成終了日:二〇一三年二月十日
 制作時間:一時間くらい
 文字数:五百六十一

シューズを書けなかった……)

KKST-0011

 新聞を読み終わってソファの脇に畳むと、足下でだらんと寝伏せていた黒いレトリバーがちらり、こちらを伺ってきた。何も言わずに額を撫でたら、その手に鼻をつけて二、三尻尾を振ったものの、それきり、またぺたんと顎を床に置いて、ぼんやりした世界へ沈んでいった。

 短めの被毛に巻き付いた首輪全面のバックライトが青色に波打っている。ご気分が優れないようだ。

 丁度陽もかなり色づいてきたので、散歩に行こう、と声をかけた。

 彼はにわかに起き上がって、ジャンパーを羽織るこちらへ向かって、尻尾振り振り駆けつけた。玄関まわりで伸びたり、うろついたりしては、期待に輝く瞳を再三投げる。首輪にはイエローの光がくるくる巡っていた。

 大分くたびれたアクリル繊維の胴輪(ハーネス)を取り付けてやるときに、長らく使っていなかった、首輪の縁にある小さな「きもちスイッチ」を入れてみた。

 途端に首輪から、

「脱糞!」

 とクリアな音声が飛び出たので、すぐスイッチを切った。

 胴輪に赤いリードを引っかけて、一緒に家を出る。裏の雑木林を歩いて、河原へ出るのがお決まりの行程である。散策路には冷たく湿った空気が漂っていて、木々のさわさわといううごめきに、鳥や虫の声が紛れて響いていた。色づいた落ち葉がへばりついて溶けていく土の上を、ぺたぺた軽やかにレトリバーが先導して、ハッハッ、と息吐きながら時々ちらり、振り返る。

 自分なりの変顔をつくってみせたが、特に反応なくあっちを向かれた。

 未だにどう返すのが正解なのか分からない。

 大小のトイレを済ませて河原に出ると、束ねて握っていたリードの余りを離してやった。いいよ、と合図すると、彼は待ってましたとばかりに、勢いよく走り出した。

 全部で二十五メートルあるリードが、見る見る遠ざかるレトリバーの、軌跡になって延びていく。

 ぴんと引っ張られないうちに、こちらも走って後を追う。すると急に彼はばっ、と引き返し、尻尾を立てながら、飛び石のように全身弾ませて嬉しそうに向かってきた。その躍動する、肩、脚、胸の筋骨にあわせて黒毛が艶めく。

 襲われてはたまらないと思い、あわてて進路から飛び退いたけれども、向こうはそのまま横を突っ切って行った。そして大分遠くから、へらへら舌を出して、挑発するようにこちらを見た。若干むきになって猛発進したら、また明後日の方角へ逃げていった。

 五分も経たずに疲れて飽きて、しゃがみ込んでいたところへ、川の水をひとしきり舐めたレトリバーが戻ってきて、背を向けてお座りをした。行儀良い仕草が可愛らしかったので、頭から背中にかけて触ってやりながら、緑色に光る首輪の「きもちスイッチ」を再び入れた。

「めし!」

 すぐスイッチを切った。

 彼は満足そうにちらり、何度かこちらを見てきたが、しばらく放っておいた。

 

 (※この文章の内容は、フィクションです。趣旨については「はじめに」をご覧ください。)

 仮題:バッカス(デモ版)
 分類:描写文
 作成開始日:二〇一三年二月三日
 作成終了日:二〇一三年二月三日
 制作時間:三時間半くらい
 文字数:千百七十一

KKST-0010

〇次のキーワードを用いて、八百字以内で物語のあらすじを書きます。

(音楽CD・風力発電・時代劇・魚)

※キーワードは、Wikipediaの「おまかせ表示」機能を利用して、出来るだけランダムに選びました。

 

〇おしあがり(八百字)

 洋上での風力発電が盛んな海辺の町で暮らす高校生・ケイタ。ある朝、いつものように漁師の父らと船で沖に出て網を引いた彼は、揚がった魚の中に金色のダツを見つけた。放置しても腐らないそれは、地元の言い伝えによれば「凶兆」であり、見つけた者が芝居を捧げ、終わりに誰かをそのダツで刺さなければ災いが起こるという。はじめ意に介さなかったケイタだが、周囲で不審火や事故死が相次いだため、季節外れの転校生・アイコや親友・ノリチカらのたきつけもあり、夏祭りに神社の境内で芝居をすることを決める。

 準備を始めたケイタは、時代劇の選考など何かと口を出すアイコに関心を持つが、彼女は何の前触れもなく姿を消した。一連の事件に関係があると直感した彼は、ノリチカらと真相を探る。すると、事件の被害者は皆、洋上風車に環境上の理由から反対だったことが分かる。風車推進派の町幹部や有力者の関与が疑われたものの、誰も知らぬ存ぜぬでらちがあかない。反対派であったケイタの父親にも問いただすが、父親は、風車の管理施設が、アイコの転校を境に武装集団に占拠されていると告げ、深入りを禁じる。

 祭りの日を迎え、神社で「芝居」の準備をしていたケイタを武装集団が突如襲い、風車の管理施設へさらった。中にはアイコがおり、実は風車が公安の実験装置で、自分は準備のため町で活動する父親のカモフラージュだと明かした。町全体を集団催眠で狂乱させる低周波音の発射試験を行う前に、「異常な物品」を所持する彼だけ調査のため隔離したという。ケイタの抵抗むなしく試験が開始されるが、パニックになったのは武装集団の方だった。変心したアイコがイヤホンに低周波音が流れるよう細工していたのだ。同士討ちの銃声の中、彼女はケイタから借りていた音楽CDを出し、その光に飛びついた金色のダツに首を貫かれた。彼が脱出するのと同時に管理施設は爆発、試験は阻止され、町は平穏を取り戻した。

 

(※この文章の内容は、フィクションです。趣旨については「はじめに」をご覧ください。)

 仮題:金色のダツ
 分類:粗すじ
 作成開始日:二〇一三年一月十四日
 作成終了日:二〇一三年一月二十七日
 制作時間:七時間くらい
 文字数:九百十五

 (あらすじ書くの、超絶むずかしい……!)