tamagome logs

たまごにことだま、こめてめばえる。

KKST-0027

       (一)

 そこはかとなくイケた顔を映しに水面(みなも)をのぞくと、サメの巨頭が噴き出した。ので俺は悲鳴をぶちまけ卒倒した。

「さっさっ、サメーッ!!」

 黄ばんだ牙をむき出した顎が欄干を折り割り、俺の足先三寸にかぶりついた。四肢から脳へと八つ裂きの恐怖がなだれ込む。はしる戦慄。

 

       (二)

「ぴぎゃーッ!! ぴぎゃーッ!!」

 処理前の豚みてえに錯乱した俺は、痙攣する意識と笑い狂った足腰で無我夢中に這い逃げた。それを弄ぶようにサメは荒ぶる頭部を振り乱し、木道ごと砕き散らしながら俺へ迫った。岸へ出て、ぬかるみに滑り、林のくぼみへ転げ落ちたこの身目がけて、悪夢舞う。

 

       (三)

 絶望、絶命一切を覚悟した俺は、してから、尻そばで野ざらしのアナログテレビ本体を目にし、とっさに引っ掴んで、躍りかかったサメの喉奥向けて振り放った。巨体は夢なくそのまま突っ込んできたが、口先が斜めにぶれ、俺は顎下に潰されるにとどまる。

 渾身の思いで俺は叫んだ。

「地デジ化ッ!!」

 

       (四)

 全身に勝機が駆け巡った。その勢いで腹の下から飛び出した俺は、
「アナログ放送はッ!!」山積みになっていた不法投棄のブラウン管テレビを、
「終了しましたあああッ!!」ひたすら持ち上げてはサメに叩きつけ続けた。

 駆けつけた相棒が、しばし様子を見た後言った。

「不細工っすねー」

 

(※この文章の内容は、フィクションです。趣旨については「はじめに」をご覧ください。)

 仮題:いけめん
 分類:スリル
 作成開始日:二〇一三年十二月三十一日
 作成終了日:二〇一三年十二月三十一日
 制作時間:二時間三十分
 文字数:五百七十四