tamagome logs

たまごにことだま、こめてめばえる。

KKST-0030

〇本棚に無造作に積んであったニッセンの二〇一三年夏カタログでファッションを決めて、ワンカット書きます。

アディダスサウナスーツ、ブラック×ピンク(九千九百九十円)
・ピンク色のダンベル(詳細不明)

 

〇おしあがり

 熱帯夜明けのしなびた中通り、つかの間に流れる朝陽の風の中を、年増な顔つきの女性の姿が横切った。

 黒く艶めくジョギングスーツに全身を包み、潜むように深くフードをかぶって前を睨んで、舗装を軽快に蹴っていく。そのズボンにはしった三つの縦縞、白い両手が掴む亜鈴(アレイ)のピンクが、着々と振れ弾むのに何となく、見とれた。

 そのまま遠ざかるのを目で追っていたら、いっとき、女性は亜鈴を二つとも思い切り振りおろし、反動で繰り出したそれにつられて、逆さに跳んで、宙返りしたところでぷつと消え、

 この鼻先に降ってきた。
 そして、平然と元来た道を走っていく。抑制された吐息のリズムを残して。

 

 

(※この文章の内容は、フィクションです。趣旨については「はじめに」をご覧ください。)

 仮題:INISN 2013S 283A
 分類:カット
 作成開始日:二〇十四年二月二十二日
 作成終了日:二〇十四年二月二十二日
 制作時間:一時間くらい
 文字数:四百