tamagome logs

たまごにことだま、こめてめばえる。

KKST-0030

〇本棚に無造作に積んであったニッセンの二〇一三年夏カタログでファッションを決めて、ワンカット書きます。

アディダスサウナスーツ、ブラック×ピンク(九千九百九十円)
・ピンク色のダンベル(詳細不明)

 

〇おしあがり

 熱帯夜明けのしなびた中通り、つかの間に流れる朝陽の風の中を、年増な顔つきの女性の姿が横切った。

 黒く艶めくジョギングスーツに全身を包み、潜むように深くフードをかぶって前を睨んで、舗装を軽快に蹴っていく。そのズボンにはしった三つの縦縞、白い両手が掴む亜鈴(アレイ)のピンクが、着々と振れ弾むのに何となく、見とれた。

 そのまま遠ざかるのを目で追っていたら、いっとき、女性は亜鈴を二つとも思い切り振りおろし、反動で繰り出したそれにつられて、逆さに跳んで、宙返りしたところでぷつと消え、

 この鼻先に降ってきた。
 そして、平然と元来た道を走っていく。抑制された吐息のリズムを残して。

 

 

(※この文章の内容は、フィクションです。趣旨については「はじめに」をご覧ください。)

 仮題:INISN 2013S 283A
 分類:カット
 作成開始日:二〇十四年二月二十二日
 作成終了日:二〇十四年二月二十二日
 制作時間:一時間くらい
 文字数:四百

KKST-0029

 霞雲の奥から、歪んだ月の姿がおぼろげに透けて見えた。空は赤みがかった灰色に街の光りを照り返し、道筋は、夜闇が飲みこもうとするのをぴしゃりと拒んで、不思議に青く沈んでいた。

 新しくまぶされた粉雪が、純潔のベールのように見えた。足下から橋の先まで、それをひと筋の靴跡とけものの足跡だけが侵していた。追うように、歩みを進める。

 雪にただ埋もれた無人の河川敷に挟まれて、色を剝かれたような黒のうねりが、橋の真下へざばざば流れ込んでいく。手すりから少し、覗き込んでも、何の濃淡や輝きもない。強く、冷たい力が引きずり込むような感覚がして、思わず顔をそむける。

 車がヘッドライトを焚いて後へ前へまばらに行き交い、目に映るものを明と暗に、一瞬、さばいて消えた。

 風はほとんど吹かない。頬が凍り付く匂いもない。人の気配は、イヤフォンから流れるバラードの中にしかない。

 橋の終わりから少し行って、脇の細い路地に逸れる。

 低い新築のマンションと、執念じみた塀に覆われた古い平屋の狭間を抜けると、家並みの中で、一本の街灯が、小さな公園を聖域のように銀白に浮かばせていた。

 鎖と座面のないブランコ、シートで囲われたベンチやばね乗り遊具、鉄棒も滑り台も、何もかもが埋もれながら、終わりの季節を静かに受け入れていた。

 街灯のランプの周りでささめ雪が明かされて、小さな粒子がたおやかに降りてくるのが見えた。それは海中に限りなく漂う、微生物のようだった。そうしたらここは、海の底か何処かだろうか、と夢想した。

 不意に、両手を広げて、空を仰いだ。

 何の思惑もない。

 この顔に点々と雪が降りては、だらしないぬるさを帯びて、すぐに融けていった。

 

 やがて川沿いの道に出た。河川敷の側に続々植えられた木が影一色になって、絡み合ったむき出しの枝のすべてを空へ突き刺していた。その奥に、向こう岸の町並み、何かの信号のような、低く薄いランプの羅列が見えた。

 通りへ出る少し手前で、木々と並んで、立て看板の骨組みが一つ朽ちかけて立っているのに気づいた。背丈ほどの高さで、てっぺんに張り付け用の四角い枠が組まれていた。

 気付いたときには、

 勢いをつけて駆けだし、

 その枠に向かって思い切り頭から飛び込んでいた。どうしても、そのとき、それを抜けたらここから出られるのではないかと、思わずにいられなかった。

 頭と肩は、枠を抜けた。しかし、腹から下は重みで垂れて看板の柱へ激突し、嫌な破砕音と共に、それをからだごとなぎ倒した。地面へ打ち付けた視界が暗赤色に凍り付き、鼻と膝に深い痛みがにじんだ。人の気配は、イヤフォンから流れるダンスチューンの中にしかなかった。

 

 

(※この文章の内容は、フィクションです。趣旨については「はじめに」をご覧ください。)
 仮題:粉雪と孤独
 分類:描写文
 作成開始日:二〇一四年一月十二日
 作成終了日:二〇一四年一月十三日
 制作時間:二時間三十分
 文字数:千八十三

KKST-0028

 五歳の冬のある荒れた日のことを、グレインは今も時に鮮烈に思い出すことがあった。

 その日、村へ続くなだからな白い丘には猛烈な風が叩きつけ、ごおごおと唸りながら、彼と母の暮らす小屋の板塞ぎの窓や、石壁の角を甲高く掻いて震わせた。彼は、粉雪が吹き込む隙間に棒を詰めた外戸の前へ台を置いて上ると、目一杯背伸びして、のぞき穴のふたを開け、向こうをしかと見つめた。

 本当に神がいるのだと、彼ははじめて感じた。そしてそれが、目の前にあるとも。

 丘向こうの空は、色を失って一面に光り、その上で太陽が融けて、輝く穴と化していた。そこから無数の流星が放たれては、一瞬に貫いて、果てしなく飛び去っていった。

 彼は、右の瞳をえぐり取るような冷気と共に、誰も何も抗えない聖のちからが、母子と村のすべてを無くして、誰も彼も思いもしない、やりなおしの世界へ変えようとする甚大な意志を感じた。

 興味とおそれがまだらになって膨れ上がり、彼ひとりではうまく片付けられなかった。痛みにたまらず顔をそむけては、どうしてもまた、奇跡を覗き込んでしまう。その場から離れられないことの不安が、手足の端へ鈍く取り憑いているのが分かった。

 幼いグレインはこのとき、不意にモルデーとこの光景を分かち合いたい、そうなって欲しいと思った。しかしすぐに、母からその男がしばらく来ない、とひと月前唐突に告げられたことを思い出した。

(モルデーはこない)

 空は時が狂ったように回り巡り、まれに白布が裂け、光りの剣が大地を斬った。

(モルデーはこない)

 清すぎる青の大気がきらめいて、裁きの風が丘野の肌をなぎ払い、存在すべてを白い無がさらった。

(モルデー……)

 風はそして、惑わすように何もかも戻して見せたりもした。

(モルデーはこない)

 

 ——体を壊すからこちらへ来なさい、と母の声がした。からだから未知の力がさっと逃げていったので、思わず彼は踏み台を飛び降りて母に抱きついた。

「一夜過ぎたら、静かになるのよ」彼女は溶岩炉のそばに椅子を置いて、芋を煮込みながら編み物をしていた。「それまでお待ちなさい」

 優しく頭を撫でてもらいながら、グレインは母へきいた。

「モルデーがこないのはどうして?」

「モルデーさんは、お仕事をしなくてはいけないからね……」 

「いまさっき、モルデーをみた」

 彼は言ってから、母のことを見上げた。彼女は少し首を傾げてから、外戸へ顔を向けた。

「お外に?」

「おそとに。おそとのとおくに」

「そう、」

 返したきり、母は黙って、炉の赤い熱へぼんやり視線を落とした。

「おうちにくるんじゃないかな?」何かよい言葉を引き出そうと、彼はくいさがった。「まいにち、いつもいつもくるんだから。いまもくるんだよ。おかあさんとモルデーはこいびとでしょう? おしごとはよして、くるってことだよ。ないしょのはなしをしに……」

「来られないのよ」

 母は、淡い表情を浮かべたまま、グレインの両頬をそっとなぞって、静かに言い聞かせた。その瞳の底に、炉のかげろうが見えた。

「でも、近くまで来たのね」

 

 モルデーの死罪のことを知ったのは、それから十年も後のことだった。

 

 

(※この文章の内容は、フィクションです。趣旨については「はじめに」をご覧ください。)
 仮題:地吹雪とかげろう
 分類:気持ち
 作成開始日:二〇一四年一月三日
 作成終了日:二〇一四年一月四日
 制作時間:三時間三十分
 文字数:千二百七十

KKST-0027

       (一)

 そこはかとなくイケた顔を映しに水面(みなも)をのぞくと、サメの巨頭が噴き出した。ので俺は悲鳴をぶちまけ卒倒した。

「さっさっ、サメーッ!!」

 黄ばんだ牙をむき出した顎が欄干を折り割り、俺の足先三寸にかぶりついた。四肢から脳へと八つ裂きの恐怖がなだれ込む。はしる戦慄。

 

       (二)

「ぴぎゃーッ!! ぴぎゃーッ!!」

 処理前の豚みてえに錯乱した俺は、痙攣する意識と笑い狂った足腰で無我夢中に這い逃げた。それを弄ぶようにサメは荒ぶる頭部を振り乱し、木道ごと砕き散らしながら俺へ迫った。岸へ出て、ぬかるみに滑り、林のくぼみへ転げ落ちたこの身目がけて、悪夢舞う。

 

       (三)

 絶望、絶命一切を覚悟した俺は、してから、尻そばで野ざらしのアナログテレビ本体を目にし、とっさに引っ掴んで、躍りかかったサメの喉奥向けて振り放った。巨体は夢なくそのまま突っ込んできたが、口先が斜めにぶれ、俺は顎下に潰されるにとどまる。

 渾身の思いで俺は叫んだ。

「地デジ化ッ!!」

 

       (四)

 全身に勝機が駆け巡った。その勢いで腹の下から飛び出した俺は、
「アナログ放送はッ!!」山積みになっていた不法投棄のブラウン管テレビを、
「終了しましたあああッ!!」ひたすら持ち上げてはサメに叩きつけ続けた。

 駆けつけた相棒が、しばし様子を見た後言った。

「不細工っすねー」

 

(※この文章の内容は、フィクションです。趣旨については「はじめに」をご覧ください。)

 仮題:いけめん
 分類:スリル
 作成開始日:二〇一三年十二月三十一日
 作成終了日:二〇一三年十二月三十一日
 制作時間:二時間三十分
 文字数:五百七十四

KKST-0026

〇次のキーワードを用いて、八百字以内で物語のあらすじを書きます。

(ショッピングセンター・西暦六〇九年・戦争・田舎町)

※キーワードは、Wikipediaの「おまかせ表示」機能を利用して、出来るだけランダムに選びました。

 

〇おしあがり(八百字)

 田舎町の郊外のショッピングセンターで従業員として働くヨシアキには、ごく小さな隙間や穴を覗き込むという習癖があった。ある日の勤務中、やや強い地震に襲われた彼は、所在不明になっている年上のパート・チアキさんを捜すよう指示される。すぐに、ボイラー室で気絶して倒れている彼女を発見したものの、魔が差した彼は、その耳の何もつけていないピアス穴を思わず覗き込んでしまう。すると、何故か穴の向こうには、金色の大仏像と行き交う甲冑姿の人間の様子が。ヨシアキはこの体験に驚愕しつつも興奮する。

 店はすぐ日常を取り戻したが、我慢できなくなったヨシアキは二日後、彼女を呼び出し、正直にありのままを告白してもう一度穴を見せて欲しいと頼む。チアキさんは「変態」などと毒づいたものの面白がってもいて、結局承諾。以来、彼はチアキさん次第で何度もピアス穴を覗きながら、「向こう」が何なのか推理しようとする。

 実家に出戻っているチアキさんの家に度々家に出入りしたり、街で落ち合いながら彼女と「推理」を重ねるうちに、チアキさんの両親やひとり息子とも打ち解け、再婚相手同然の扱いを受けるようになって、「推理」は家族ぐるみに。やがて「法興寺」という文言を発見したことから、「向こう」は西暦六〇九年頃、飛鳥時代の大仏が建立された前後の寺の中で、寺や大仏の存否をめぐって二派が戦争している、という結論に達する。

 しかし、史実にはそのような記録はなく、「向こう」では寺を守る側が明らかに劣勢、現代まで残るはずの大仏が破壊される危機にあった。歴史が変わらないように「何か」すべきだと強く訴えるチアキさんの息子の発案によって、交戦中の「向こう」の敵陣にパーティースプレーでひもを噴射しまくって「援護」し、敗走させることに成功する。その後、一連のことがきっかけで婿入りしたヨシアキは、チアキさんのピアス穴の向こうにまた別の光景を見るようになる。

 

(※この文章の内容は、フィクションです。趣旨については「はじめに」をご覧ください。)

 仮題:ピアス・ホール・タイム
 分類:粗すじ
 作成開始日:二〇一三年六月一日
 作成終了日:二〇一三年六月九日
 制作時間:八時間くらい
 文字数:九百二十四

 

(このあらすじに行き着くまでに、三つほどボツにしました……。苦しかった……!)

KKST-0025

「さあさ皆様お待ちかね、鶏肋屋(けいろくや)恒例、持ってけ市の時間だよ! 五百円持ってこぞってこぞって、五千円から五万円まで、とっておきの商品の、文字通りの投げ売りだあ! 早いもの掴んだもの勝ちの持ってけ市だよ! こぞってこぞってぇ!」

 どや顔で書きものでもしようとカフェまで歩いていたところ、中華街の傍らにがやがや人だかりが出来ていたので、何となく立ち止まった。

 見ると、脚立に乗ったはっぴ姿のおじさんが、金色の看板を掲げた雑貨店の軒先でしわがれ声を張り上げて、若い店員が差し出すどでかいダンボール箱の中から、大小長短ぴんきりの物体を次々四方に放り投げていた。

 その度に無数の腕が歓声とともに行方を追って伸びて、品物を掴んでは取りこんでいく。

 別に買い物する予定は全くなかったのだけれど、射幸心をあおられたのか、気が付くと自分もその人ごみにふらふら近寄って、端っこからそれらしく手を挙げていた。五分かそこらこの狂乱に身を任せて、普段石みたいに固まった気分を意地汚く崩すのもからだに良いかと思った。

「六千九百八十円のチャイナコートだ、持ってけえ!」

「綿からカバーまでシルクシルクシルク、掛け布団一万九千八百円だ、持ってけ持ってけえ!」

「お笑い芸人じゃないが、落とすなよ絶対落とすなよ、白磁(はくじ)茶器セット、この野郎持ってけえ!」

 威勢良く醤油顔のおじさんが吐き捨て、大半女性の悲鳴と、乱暴なもみ合いの嵐が湧く。

 街の赤い柱や枠。屋根や壁の文様の青緑。あちこちに鎮座する龍と漢字だらけの看板。独特な空気がみずから酔わせ、こちらの正気を退かしてくれるように思えた。

「縁起が良いね、売れ残りの七福神だ、持ってけえ!」

 おじさんが繰り出した物体がひとつ、弧を描いて、こちら真正面へ飛んできた。良し来い、と軽くジャンプして、並みいる手と手を抜けだしそれの端をつかみ取った。追いすがるようにいくつかの手が異様な力で引き離そうとしてきたが、夢中で胸元までぶんどって、抱きかかえた。

 まず急いでその場から離れて、そこそこの幸運に浸ったあと、手に入れたビニル包みの中身を確かめる。

 金メッキされた、まさに縁起物の熊手で、包みに「一万五千六百円」と値札が貼られていた。

 中国と何も関係ないような……、とも思ったが、とにかく良い値段だったので、店の奥で五百円払ってから、優越感とともに人だかりに背を向けた。

 歩きながらこの熊手の始末を考えてみたら、まあ家に飾るくらいしか使い途がないので、いっそのこと売ってしまおうか、オークションに出すのはどうだろう、と思いついた。ちょっと路地に入って壁にもたれて、相場を調べようと携帯電話を出していじっていると、「おっす」と、聞き覚えのある声がした。

「帆立(ほたて)主任」

 勤め先の上司だった。

「どうしたんですか、こんなところで」

「どうしたって、お前こそどうしたのよ」主任はこざっぱりしたジャケットを着て、いかにもな出掛けの体だった。こちらに不似合いな熊手に早速目をつけて、「お、なんだそれ。買ったの?」

「持ってけ市でつい、取っちゃって……」

「持ってけ市? なに、オバチャンどもとわざわざ格闘してまでそいつを買ったの?」

「はあ……」そう言われると我に帰って、小恥ずかしくなる。「でも、一万五千円なので……」

「へえ」

 主任は熊手を手にとって、しげしげと興味深そうに細部や値札を観察したあと、

「まあ、良くやった方か」

 と一言評して、こちらに銃口を向けた。

 ばあん、と目の前いっぱいにそれが炸裂して、首の付け根を焼き切れたような熱さと痛みが貫き、真っ赤で生ぬるいしぶきがほとばしった。それを感じたときにはもう体が動かなくなっていて、力をなくした膝や腰が折れるのになすがまま、視界が崩れ、地べたに横倒しで転がる。

 帆立主任が金色の熊手を持って、路地の向こうへ全速力で駆けていくのが見えた。

 出口の光へ飛び込もうとしたその背中が、何者かの銃撃で弾かれて、棒倒しになるのも見えた。

 

(※この文章の内容は、フィクションです。趣旨については「はじめに」をご覧ください。)

 仮題:持ってけ市
 分類:夢原作
 作成開始日:二〇一三年五月十九日
 作成終了日:二〇一三年五月十九日
 制作時間:二時間くらい
 文字数:千六百五十五

KKST-0024

「そこでダニーが、たこ焼きを空中散布したわけー」

「超クール」

 ジェイとアンディはげらげら笑い合った。

「しかもそれ、レーザー出すの。もう避けんの大変」

 ジェイは真っ赤なフロアソファから立ちあがり、投げだされた新聞紙やDVDを蹴散らしながら、冷蔵庫から紙パックの牛乳を出してきて、封を開け、ちゃぶ台のジョッキへ注いだ。

「超ハード」

 アンディはからだをくねらせて笑った。

 紙パックからジョッキへなみなみと牛乳が入った。

 なみなみとなみなみとなみなみとなみなみと入った牛乳は、そのうち、なみなみとなみなみとなみなみとなみなみとジョッキからあふれ出し、しゃばだばしゃばだばしゃばだばしゃばだ、とスナック類で散らかったちゃぶ台一面に広がって、そのまま全方向滝になってこぼれ落ちた。

 鼻歌とともにジェイが牛乳を垂れ流す一部始終を、アンディは、いつの間にかとりつかれたような形相で見届けていた。

(なんという自然かつ至高な防壁展開……! これなら我等聖戦士は……テレビジョンを介し公安の陰謀が配信する……あの有毒電波など攻略したも同然なり……!)

 そういう衝撃を受けながら、夢中で小脇に抱えたボックスティッシュから一枚抜いた。そして一目も見ずに脇へ放った。

 ちり紙がひらり、無軌道に宙を縫って、牛乳浸しになった床へ滑り、しみこんでいくのを待つことなくしゅびどぅばしゅびどぅばしゅびどぅばしゅびどぅば、アンディは、矢継ぎ早にちり紙を抜いて投げて抜いて投げて抜いて投げて抜いて投げた。

 背後に無数のちり紙を乱れ飛ばす彼の姿を目の当たりにしたジェイは、すっかり鼻歌をやめ、電撃的な感動の余り、呆然としてしまった。

(超、ウィンウィン……!)

 

(※この文章の内容は、フィクションです。趣旨については「はじめに」をご覧ください。)

 仮題:そういうわけー
 分類:勢いで
 作成開始日:二〇一三年五月一日
 作成終了日:二〇一三年五月一日
 制作時間:一時間ちょっと
 文字数:七百二十二