tamagome logs

たまごにことだま、こめてめばえる。

KKST-0011

新聞を読み終わってソファの脇に畳むと、足下でだらんと寝伏せていた黒いレトリバーがちらり、こちらを伺ってきた。何も言わずに額を撫でたら、その手に鼻をつけて二、三尻尾を振ったものの、それきり、またぺたんと顎を床に置いて、ぼんやりした世界へ沈ん…

KKST-0010

〇次のキーワードを用いて、八百字以内で物語のあらすじを書きます。 (音楽CD・風力発電・時代劇・魚) ※キーワードは、Wikipediaの「おまかせ表示」機能を利用して、出来るだけランダムに選びました。 〇おしあがり(八百字) 洋上での風力発電が盛んな…

KKST-0009

日の入り後の薄暗い部屋で、テレビがタレントの開運旅もの番組を垂れ流すのを背に、僕はパソコンで名の知れない同人作家の少女漫画をダウンロードしようとしていた。 しゅうしゅうとディスプレイの背後で、円筒型の加湿器が湯気をあげている最中から、 「あ…

KKST-0008

毎日一通、わたし宛に差出人のない絵手紙が届く。素朴な写真やイラストに、わたしをいたわるうつくしい手書きの言葉を添えて。もう一年以上も、ずっと。 差出人は、文面からして、わたしを詳しく知らないようで、愛しているわけでも、会いたいわけでもないよ…

KKST-0007

この日会議室で開かれた、販売促進課の全体ミーティングは、新型便秘薬の商品戦略がおもな議題だった。 「それでは、担当の平澤(ひらさわ)くんから、詳しくお話しします」 女性係長がコの字に並ぶ一同に一声かけたのち、目で合図すると、若い平社員が立ち…

KKST-0006

〇【明けましておめでとうございます】×【開けましておめでとうございます】 〇 「あけまして!」 サラサは威勢良く言って、暗闇の中、手に持っていたコードを引っ張った。 手前の裸電球がまぶしく点灯し、でたらめにくるくる絡み合った針金へ貼り付けた、赤…

KKST-0005

「ちょおっと、待ってもらって良いですか?」「ん」 生徒会長、少し首を捻ったものの、「良いよ。どうぞ」と渋々応じてくれたので、おれは東埜(ひがしの)の背中を叩いて、「ちょっと外して、ミーティングしよう」と、立ち上がった。「はえ、」 四分の一ほ…

KKST-0004

〇MUJI Laboの二〇一二年秋冬コーディネート集でファッションを決めて、ワンカット書きます。 ・オーガニックコットンツイル裏フラノフーデッドブルゾン・カーキ(七千五百円)・ウールカシミヤ入りタートルネックセーター・ネイビー(四千八百八十六円)・…

KKST-0003

東芝製の古い黄緑色の冷蔵庫から、スーパーで買った茨城県産の和梨を出してきた。四個入り百九十八円のセール品だった。 少し扁平で、表面の黄金色の皮にびっしりと薄色の斑点がついている。手のひらで軽く持て余す程度の大きさ、中が充ちているのに相応しい…

KKST-0002

がしゃあん、 と、大仰に割れものの割れた音がした。 * 「貴様らか!」 顔すっかり火照らせ、あちこち血管を浮かせながら、干物じみた容貌の老人が、歯の無い口で、不明瞭にわめいた。 「貴様らか、俺の、柿右衛門(かきえもん)の花瓶を割ったのは!」 老…

KKST-0001

入社して間もないひるめし時のこと、 「僕の家、超汚いんすよ」 と雑談の流れでこぼしたら、課の先輩の恭子(きょうこ)さんが、 「何なら、あたしがかたしてやろうか?」 と乗ってきたので、そこそこわくわくしながらお言葉に甘えることにした。何でも、生…

書き捨てについて・はじめに

2011年の夏、「イグジット」という小説を未完のまま発表し、ウェブでの活動を休止したときよりも随分体調は良くなっている。なってはいるが、ちからが出ない。小説をばりばり書いてどしどし発表したいのに、ホームページをイカした見てくれにしたいのに、そ…

tamagome logsスタート & tamagomeおやすみのお知らせ

□tamagome logsがスタートしました これまで、tamagome posterousにて記事を書いてきましたが、思うところあって、はてなブログへ移転することにしました。そのままでは名称が変なので、「tamagome logs」と月並みながら改称しております。 ブログの内容は特…